はじめに
ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)は最近、2023年第4四半期に2億6,000万ドルの大幅な損失を計上し、株価が急落するという大きな落ち込みに直面した。この財務上の動揺は、同銀行が昨年、破綻した暗号に親和的なシグネチャー・バンクの資産を買収したことに続くもので、この動きは当初、金融界で楽観的に受け止められていた。NYCBも減配を発表し、状況は急変した。
シグネチャー・バンク破綻とNYCB買収の背景
2023年3月、銀行業界はシグネチャー・バンクの劇的な閉鎖を目の当たりにした。シグネチャー・バンクは、財務状況の悪化によりニューヨーク金融サービス局(NYDFS)に正式に引き継がれた。この不穏な出来事のわずか1週間後、NYCBは破綻した銀行の非暗号預金とローンを買収することで戦略的な動きを見せた。この買収は銀行セクターにおけるより大きな金融激変の一部であり、シグネチャー・バンクの資産とオペレーションは大きな変貌を遂げた。
米連邦預金保険公社(FDIC)は3月20日までに、シグネチャー・バンクの40支店をNYCBの完全子会社であるフラッグスター・バンクの傘下に再編することを発表した。この移行は、消滅したシグネチャー・バンクの顧客や関係者にとって新たな章となり、NYCBにとっても戦略的な拡大であった。
買収後の当初の楽観論
買収後、NYCBの株価は著しく上昇した。NYCBの株価は3月21日に9.19ドルまで上昇し、7月31日には最高値の13.87ドルまで急騰した。NYCBのトーマス・カンゲミ社長兼最高経営責任者(CEO)は、シグネチャー・バンクの資産と負債を「戦略的にも財務的にも魅力的」と評価し、買収を支持した。さらにカンゲミCEOは、この買収を「ユニークな機会」であると強調し、130を超えるプライベート・バンキング・チームに支えられた低コストの預金と強固なミドルマーケット事業を大幅に取り込むことで、バランスシートが大幅に強化されると述べた。
転機:損失と減配
しかし、当初の楽観論は長くは続かなかった。大幅な売り越しが続き、シグネチャー・バンク買収で得た利益はすべて帳消しとなった。1月31日、NYCB'の財務情報開示は、2023年最終四半期に2億6,000万ドルの損失を計上し、前年同期の1億6,400万ドルの利益とは対照的な厳しい状況を明らかにした。財務のひっ迫を受けて、NYCBの経営陣はカンゲミの指揮の下、資本増強のために断固たる措置をとった。この戦略には、四半期ごとの普通配当を1株当たりわずか0.05ドルに減額することも含まれており、これは銀行の財務基盤を安定させる緊急の必要性を反映したものであった。
NYCB発表後の株価パフォーマンス
市場はこの発表に素早く、そして厳しく反応した。発表前10.37ドルだったNYCBの株価は、発表当日に6.34ドルまで急落した。その後7.12ドルまで若干回復したものの、株価は以前の水準を取り戻すのに苦労した。本稿執筆時点では、株価は6.49ドルにとどまっている(株式分析プラットフォーム「TradingView」のレポートによる)。この急落は、NYCBの財務安定性と将来性に対する市場の信頼が揺らいでいることを浮き彫りにした。
シグネチャー・バンクの破綻をめぐる論争
シグネチャー・バンクの破綻とその後のNYCBによる買収は、その根本的な原因、特に不安定な暗号市場へのエクスポージャーに関する議論を巻き起こした。2023年5月、FDICのマーティン・グルーエンバーグ委員長は、シグネチャー・バンクの破綻は暗号に関連するリスクを理解していなかったことに起因すると指摘した。しかし、この見解は全会一致で受け入れられたわけではない。NYDFSのアドリアン・ハリス長官はこの見解に反論し、破綻は同行の暗号取引とは関係ないと主張した。さらに論争を激化させたのは、シンシア・ルミス上院議員で、シグネチャー・バンクの元幹部スコット・シェイがデジタル資産に責任を転嫁していると批判し、銀行内部の失敗をより内省的に検証するよう促した。
結論
シグネチャー・バンクの戦略的買収から最近の金融不況と株価急落に至るまでのNYCBの歩みは、銀行部門の統合、特に暗号市場の複雑なダイナミクスと絡んだ統合の不安定な性質を強調している。シグネチャー・バンクの破綻の背景に関する対照的な見解は、伝統的な銀行業務と新興の金融技術との間の複雑で、しばしば論争の的となる相互作用をさらに浮き彫りにしている。NYCBがこの困難な時代を乗り越えていく中で、その経験は銀行業界にとって重要なケーススタディとなり、リスク管理、戦略的買収、そして進化し続ける金融情勢の中で成功するために必要な回復力についての洞察を提供してくれる。