NASAは、深宇宙光通信(DSOC)システムの可能性を実証し、地球と火星間の最も遠い距離である2億9000万マイルという驚異的な距離をレーザーでデータ伝送することに成功した。この成果は、NASAの実験的通信プログラムの第一段階が終了したことを意味する。
2022年10月に打ち上げられたDSOC実験は、近赤外線レーザービームを採用し、従来の無線システムの最大100倍の速度でデータを転送する。NASAによると、このシステムは、現在の通信技術の到達範囲をはるかに超えた宇宙船から、高解像度のビデオを含む複雑な情報を送信するのに有効であることが証明されている。
第1フェーズの成功と伝達力
DSOC実験は、プシュケ宇宙船からのハイビジョン・ビデオを、遠距離でも画質の劣化を最小限に抑えて地球に伝送することができた。例えば、探査機が2億4000万マイル離れた場所にいたとき、レーザーシステムは毎秒6.25メガビットの伝送速度を維持し、ピーク時には毎秒8.3メガビットに達した。これに比べ、従来の無線システムは速度面で大きく遅れをとっている。
より型破りなテストでは、NASAが深宇宙から「テーターズ」と名付けた猫のビデオをストリーミングし、データの確実かつ明確な伝送という点で、レーザー通信が達成できる限界に挑戦した。これらのテストは、何百万マイルも離れたところから、現代のブロードバンド接続に匹敵する速度で、超高解像度のコンテンツを送信するシステムの能力を披露した。
レーザー通信のメリット
この最先端の光通信システムは、従来の無線方式に比べていくつかの利点がある。格段に速い速度でデータを送信できるだけでなく、重くかさばる装置を必要としない。エネルギー消費量は従来のシステムに匹敵するため、将来の深宇宙ミッションにとって実用的なソリューションとなる。
NASAのシステムは、プシュケ宇宙船に搭載されたレーザー・トランシーバーを通じて作動し、地球上の地上局と通信する。カリフォルニア工科大学のヘール望遠鏡がダウンリンク受信機として機能し、NASAのジェット推進研究所のテーブルマウンテン施設が7キロワットのレーザーパワーを使ってアップリンク送信を管理している。
将来の段階と最適化
深宇宙光通信プロジェクトの次のフェーズは、2025年1月に開始される予定である。このフェーズの間、NASAは2025年10月までシステムのテストと最適化を続け、深宇宙の条件下で少なくとも1年間は運用できるようにすることを目標とする。
NASAは2年間の実験に成功し、約11テラビットのデータをダウンリンクした。
宇宙探査への影響
人類が宇宙探査の限界に挑み続けるなか、この進歩は、科学データ、画像、その他の重要な情報を、より効率的に、広大な距離を越えて伝送する扉を開く可能性がある。将来的には、レーザー通信システムによって、火星の入植者がハイビジョン映像を地球に送信し、前例のないスピードで世界間のギャップを埋めることさえ可能になるかもしれない。
これらの有望な結果にもかかわらず、DSOCプロジェクトの成功にはリスクが伴い、まだ多くのことが検証されていない。NASAは、DSOCが惑星間通信の要となる前に、潜在的な課題に対処し、システムの信頼性を向上させる必要がある。しかし、このプロジェクトの現在の軌跡を見れば、宇宙探査における革新的な技術になる準備が整っているように見える。